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【 木工品のおもしろさ 】

掲載日 2023-09-07

木工品っておもしろい。

私が使う木材は、結構長い期間乾燥させたものだ。
仕入れる時にも何年程前から乾燥されているのかを聞く。
乾燥が不足しているものは、我々の中ではグリーンと呼ばれるね。



ご存知の方も多いと思うが、シャフト材で使われるメープル材などは随分と長く寝かされる。
その期間中に残念ながら反ってしまったりねじれたりする、いわゆる曲がってしまうこともよくある。
うちでは、削り始めてから仕上がりまで何回か分けて削るわけだけれど……削った日の時間帯が悪かったのか、刃物との相性か、それとも湿度がだめだったのか…、原因は不明だが、曲がってしまうものはある。
そして曲がった素材はもう修正できない。
なんとか修正できないか、と昔は色々やってみたけど、細くなって反りの出たものはムリ!!



中にはずっと細かく削ってきて、最後の1カットで曲がる。
『エエッ?!』と思うけれど、これが現実だ。
こんな時の私はおそらく、いや、かなり不機嫌だと思う。
そんな時は近寄らないでネ。寄らば斬るぞっ!だ。


結論、
何年寝かせた材でも関係ない……曲がる時は曲がる!!!

ナニ?!ならば寝かせなくても変わりはないのではないか…?
フムム……おぬし、できるな……、量産メーカーの回し者か?!


“寝かせる”とは曲がりの比率を下げるのもあるが、より乾燥させて硬度を高める効果もあるのだ。こちらが本当のネライなの。



シャフトに比べるとバットの方はそれほど動かない。
大体ハンドルをつけてから半年〜1年、ものによっては2年ほどで仕上がるわけだが、その前にフロント材としてみたら、例えば黒檀の角材で20年は寝かせている。
それを丸材にして数年。
だからトータルするとへたすると30年は寝ている。
うちの黒檀はすべてこれ以上寝かせた素材だ。

それでも黒檀やチューリップウッドは動くことが多い。
乾燥がいかにゆっくりなのかがよくわかるネ。
逆にアルベス、メープル、ココボロはあまり動かない。
意外なのがパープルハートで、思っていたよりずっと動く。
イメージではソリッドで動かないと思っていたが、実際はまぁ動く。


動きのあるなしで素材を見るのはキューを作るうえでとても大切だ。

そして、素材を見るうえでもうひとつ別な見方もある。
大切なのは色味とツヤ(艶)だと思っている。
こちらはツヤが丁度乗っている時に仕上げたい。

色味が浅いのはせっかくの材がもったいないよネ。
逆に時間が経ちすぎて色が沈みすぎても、…である。
ローズウッドはこのあたりが大変に難しい。
そしてパープルハートは綺麗な色を出すのが難しい。
メープルはツヤ!!

世界中に自称カスタムなんちゃらは多いけど、意外にこのあたりの上手なメーカーは少ないと感じている。



木工品としてのキュー作りをしているとイヤでもこんな事を気にして…それからバランスをみて…重さをみて…と様々な事を想い浮かべるのだ。急いでするとまず失敗するね。
失敗とは、最初から作り直しを意味するのだ。
たったひとつの自分だけのものづくり。

キュー作りはだから辞められない。






さて、撞楽を自分で使ってみて思うことを書こうか。


今私が使用しているアルベス×エボニー、これはJerryが推奨していたパターン。
この話を聞いたのは1988年か89年のことだ。
Jerryに勧められても、私自身はパープルが一番ソリッドだと信じていたから当時はまったく意識していなかった。
だけど今自分で実際に使ってみて、手にしているのはアルベス。(確めたくなったの)

アルベスを使ってみての感想。
断然ソリッドという訳ではない。
ただし木材の重さと打感の安定感というのか、そのあたりの良さは使っていて身に沁みてわかる。

まず“木材が動かない”ということは作る側としては一番に安心できる点なのではなかろうか。
特にSWは動くということで有名だったからネ。ジェリーが一番良い、と言った気持ちが今はよくわかる。

正直な事を言うと私自身は絶対にパープルハート派。
19.5オンス以下のパープルハートは打感がソリッド(球離れが早い)。
19.5オンスを超えると身体の大きい人には良いけど、170cmくらいのプレーヤーにはあまりお勧めしない。ミートポイントが遅れるの。
いずれ次に使うのはパープルハートなので、ご報告できるかと思っています。




台湾ではエボニー一辺倒だ。トムヤムクンはタイだね。
小柄なプレーヤーでも皆20オンスオーバーのエボエボを使っている。
私はコアしない無垢の黒檀のエボエボでも19オンス程で作っているが、SWのエボエボはどうしても20オンス超えのものになる。

なぜトムヤムクンを出したかというと、エボニーの使い手としてはやはりヤンチンスンだ!!
どうして台湾で黒檀が流行し神話化したかというと、湿度が高い渋い台ではしっかりと球を入れることが求められることにある。
スキッドしやすい軽い球質のキューは好まれないという訳だ。



あとはやはりメープル。
ここはもうこれだけで長い長い説明になる。
というわけでメープルに関しては今回はサラバジャ!!



それとローズウッド系(ココボロ・紫檀)(重い!)
ここは色味と木理(きめ)と…そして持つ人のこだわりの世界だ。
ココボロは、明るい色味のものと暗い色味のものに分かれるの。
私はずっとあちこちココボロの角材を探しているが、まずなかなかないネ。選べるほどの素材がない。ピン!!ときたら手に入れることをお勧めします。



美しさでは希少材のチューリップウッド!!
ココボロとチューリップは同じローズウッド系だがまるで別物である。
ココボロはなかなか探せないと書いたけれど、チューリップウッドはマーケットで探せないどころではなく、破片すら目にしたことがない。それほど日本国内では希少材!!




撞楽は1990年頃のSouth Westのオマージュである。
撞いた感じは色々あるだろうが、私的には本家に引けを取っていないと思っている。

なぜ私が撞楽を作っているか…、
それは芯材を使わずに作られている無垢のキューだから。
これは素材の良さ・違いを愉しめるものなのだ。

私の大好きな寿司でいうと、
イカはイカの味、タコはタコ、まぐろはまぐろ、ブリはブリ、
まさにそのまま。ごまかしがきかない。


木材では黒檀とメープルとアルベスとココボロとそれぞれに異なる個性がある。
もちろん見た目の細かな違いも愉しめるしネ。
ハンドルもほとんどの作品はメープル。(たまにパープルハートもある)


ソリッドな撞き味にするための加工材や集成材は一切使っていない。
私が欲しいのは澄んだ打音であり、濁りのない打感である。




合掌



※ この原稿を入力している娘から見ると、
  父は少し精神分裂者なのかもしれない…などと思ってしまいます。笑)
  ご笑読頂ければ幸いです。