【 カスタムキュー考4 『コアするフォーチュンキュー』 】
掲載日 2017-05-22
今日のテーマをひと目見てAKBをイメージしない人はいないだろう。
AKBも最近はあまり話題にならなくなってきたが、私の中ではAKBとビリヤードは密接な繋がりがある。
キュー作りは手作業であるがリズム感が大事なのは言うまでもない・・・。
♪アイウォンキュ〜、アイニードキュ〜、アイラブキュ〜♪今でも心の中では毎日このサウンドなのだ、調子イイヨ〜〜!!
曲名がヘビーローテーション!!なので、プレイにも最高のミュージックなのは言うまでもない。
AKBのサウンドは、私ほどにカスタムキューに恋をするとキューの構造にまで影響を与えてしまう。
そう、コアしてしまったのである(実は8年前からしています)。
コアするとは、“中に芯を入れる”という意味である。
コアするとは、なにもキューに限らないことであり、野球のボールなどもコアして丸い芯を入れる。
キューの場合は棒状なので筒状にして中にメープルやパープルハートなどの木材、あるいはカーボンとかグラスファイバー、タングステンなどガラス繊維や金属繊維の素材を棒状にして入れるメーカーもある。何を入れるかは各々の好みであるのだが、このテクニックはビリヤードキューの場合、今から約25年程前から活発になってきたように思う。
もともとこのテクニックをキューに活用したのはGinacueのErnieで、1964年に作ったキューに象牙のボールを7個連ねて作ったアイボリーハンドルに用いられた。
象牙のボールをハンドルに連ねたスタイルはHarvey Martinが創始者であるが、彼のキューは大変重くてプレーには向かなかった。
Harveyのキューのアイデアと見た目は良かったが、そのため実際に作られたのは数本であった。
余談ではあるが、JWのBill Stroudが、自分がキューをコアすることを考えた最初の人間だという事を言ってるが、彼がしたのは1980年代末であり、全くお話にならない。彼がキューを作り始めるはるか前の話なのだ。
だが、60年代半ばに作られた数本のキュー以後で大々的にキューにこのテクニックを使い始めたのはBillであるのは間違いなく、そこにCNCのテクニックも組み合わせて全く新しいキュー作りのスタイルを持ちこんだ功績はとても大きい、これが80年代末のことである。
1988年にキュー作りを再開したGinacueの最初のラインナップは92年に発表されたのだが、コアされてなくて重さも21ozオーバーだった。
それが94、5年にはほとんどコアされてどんどん軽量化されたのだが、その裏にはBill Stroudのキュー作りを大幅に取り入れたことが活かされている。そしてそのテクニックはTadcueにも大きな転換点になったのは日本人のTad好きに知れ渡っていることと思う。
シリアルで言うとそれが1400番台の物ということになるのは、ここにお伝えしておく。
この時期はキュー作りの中では大変な変換期であったのだが、この背景についてはいずれまた別の時に書こうかと思っている。
Key Wordとしてはシャフト材、それも重くて密な色味の暗い物が誰にも手に入らなくなったから、すなわち力のないスカスカのシャフトでキューを作らなくてはならなかったからキューを軽くすることをマーケットが求めたのだ。バットとシャフトのより新しいバランスを要求されたと言ってもよいだろう。
よいシャフトが手に入らなくなったのはSouth WestもSzambotiもTadも皆同じ・・・、カスタムのプロダクト化の幕開けと言えるかもしれない。
わかりやすく実例で言うと、シャフトが125gあったからバットは450gでも良かった。でもシャフトが80gではエボニーフロントのキューなどはバランスが悪くなった訳である。だからコアするのが一気に広がったのだ。またここに丁度マッチしたのがもう一つはモーリの積層tipである。積層はどんなに頑張っても大変球離れの速いものだ。ビリヤードのキューはどこかで衝撃を受けた時にタメを作らないといけないのだが、ソリッドなバットにソリッドなシャフト材では積層tipの出る幕はない。
だから昔は皆一枚皮の厚い物を好んだ訳だ。でも80年代半ばから普及し始めた白い柔らかいシャフトで作られる軽いキューだと状況は一変したネ。
シャフトがしなるので柔らかいtipは合わなかったのだ。
アレ?もう半分書いてしまっているネ・・・。すっかりボケ老人だな。
AKBはどこ行った??あっ、とコアするフォーチュンキューだった。コアする事が重要になったのはいくつかの理由がある。
というか、コアしないメーカーを思い浮かべて欲しい。
Szamboti、Showman、Searingで次の名前は・・・Haley(ヘイリーと読む)か?
5人も居ない!これらのメーカーの共通点は・・・コンサバ!!昔ながらのオーソドックスなデザイン。あっと、それからLuckyもである。というか、であった、が正解。
私のメープルフロントとかエボニーフロントは2017年までコアしてなかった。ズレも愉しみのうち。キレと打感をEnjoyして欲しかった訳である。
コアするメリットとしては・・・
1、安定する打感。個体差が少なくなる。
2、強度を高めるし、同時に曲がりのリスクを軽減する。
3、ブレンディング(素材を)することで堅いものをより柔らかくしたり、柔らかいものをより堅くもできる。
4、キューの上の限定されたデザインスペースの自由度がUPする。
今までの木工製品としてのキューはハギとべニアがあったためどうしてもデザインにできるエリアが少なかったが、作業としては工程が少ない分、より単純化される。
5、機械化しやすい、省力化、コストダウン。
逆にデメリットとしては・・・
1、面白みがない。重さの調節のためにのみ考えられがちである。
2、皆が同じ方向に行く。
3、本来の良さ、打感が損なわれる。
4、接着ミスなどがより出やすい。
5、堅すぎがちである。
6、熟練の木工職人が必要なくなる。蓄積された経験と技術を失ってしまう。
コアすると言っても言葉で言うのは簡単であるが、自分で手作業でやってみると難しい。
技術的な解説なども書こうかと思ったが、今回はここで打ち止め!ゴメン!!