ひとりごと

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【 1にMaple、2にMaple。 】

掲載日 2017-12-31

ビリヤードはれっきとしたスポーツである。
スポーツと呼ばれるものは総じて身体の大きな人が有利なものが多い。
陸上でも水泳でもバスケットもテニスも・・・ほとんどがそうである。
その中でビリヤードは対格差はあまり関係がないように思う。
男女の差もであるが老若の差も他のスポーツに比べるとはるかに少ないのではないかと思う。
ビリヤードにおいては用具を使う、そう、キューである。
だからキューはれっきとしたスポーツ用品である。
用品ならばまず、性能が一番であり、外見はその次の要素であるべきと私はずっと思っている。見てくれだけの物はスポーツ用品としては使えない。言葉を変えて言うとトーナメント向きではないのだ。
私は自分のキューはきちんとしたスポーツ用品として作っている。
だからプレイアビリティーが最優先なのだ。

キュー作りを始めて、最初に仕上がったのが2012年。あれからまだ5年であるが、ずっと追い求めてきたのが“撞き味”。
メープルフロントのキューでRodneyがまず優勝し、それから張榮麟、謝佳臻と3人もが私のキューを使って世界的な大会で優勝してくれた。
この事は私の中ではもちろん大きな自信になったが、まだ満足はできなかった。
心の中で何かモヤモヤと靄のようなものがあった訳だ。何かが足りない。まだしっかりとした方向性が見えなかった。
その中で2016年に東京のお客様から3クッションのオーダーを受けた。
最初は畑違いということで断ったのであるが、その方のアドバイスと関東のトッププロの方たちのおかげで自分なりに試行錯誤して“見越し”のないキュー、シャフトについて勉強ができた。
ショットの強弱でバットやシャフトのしなりをどう処理するのかを随分と考え、突き詰めたつもりである。
それまでは、ひねれば手球はカーブしてある程度の見越しはあるもの、あるべき、とずっと思っていた。
そして、2017年3月の中国でのイベント(China Expo)。
ここで普段目にすることのないスヌーカーやChinese8のキューを実際に手に取ってみて驚いた。
重さも振動もバランスもはっきりとうたっているものはなく、お客の自由になる可動式のものが最新として売られている。
感想としては(誰もきちんとした理論でキューを作っていないのだな・・・)だったのである。
A社もB社もC社も・・・皆同じ事を表現して宣伝している。
例えば、一体化構造とか、見越しを大幅に削減とか、何%今までよりもUPとか、そういう類である。
そんなにキュー性能が向上する?それも毎年???それはよほど前のものがお粗末だったのだろうなということ。
自分でキューを作っている者としては、きちんと作った物はそんなに性能は上がるはずがない。有り得ないのである。
私の考えでは木工品としてのキューの性能は減点法である。
キューを100点満点で考えよう。シャフトはメープルである。ここで素材でスタートから大きく違ってくる。
メープルはスポーツ用品の中で今でも多く使われているが、ほとんどが軽い強制乾燥の白いメープルだ。とにかく軽い、スカスカ・・・。
ビリヤードのシャフトとしてはこれを使うとまず大きく減点だネ。
−20点、いや、−25点でも仕方ない。
シャフトはゆっくり乾燥した重いものが良い。80gとか90g未満のものは全てダメだ。(ブラスインサートなしの時)
ブラスインサートを入れて105gなんていうのもこの類だ。減点!!

さて、この次に私が気にする点は・・・シャフトの向き。
私はずっと何年も前からこのことを注意してシャフトを選んできたつもり。ただし、これは世界でも私だけの見方なので点数としてはあまり関係ない、でも私的には大切だ。
それから、シャフトで見逃せないのが寝かせである。
角材で仕入れ、木口に軽くニスを塗って乾燥をできるだけゆっくりにしてから、半年から1年寝かせる。そして4隅を落としてさらに数ヶ月寝かせる。それからさらに25mmの丸棒にして数ヶ月から数年寝かせる。
軽くテーパーをつけてさらに数ヶ月から数年寝かせる。もっと強くテーパーをつけてキュー先を約15mmにしてまた寝かせる。寝る子は良く育つのだ。
私のシャフトはこうして寝かせてあるものを使う。
自称キューメーカーたちのシャフトはほとんどがおそらく2ヶ月程で作られている。
だから曲がるし、購入してからも驚くほどに痩せる。
寝かせが足りないのだ。ここで−10点かな?−20点?
100点満点の減点法でバットの部分で50点、シャフトで50点。
だが、ほとんどのシャフトはここまでで既に−30点か・・・。

次にノーマルかハイテクか?
私のシャフトは中空ではない。ごめんなさい。
中空にできない訳ではなくて、中空にする必要がないからである。
私のシャフトはしっかり乾燥してあるので充分に硬い!!戻りも速い。
この辺りは各社の考え方次第であるが、私はノーマルが最高だと思っている。だが、柔らかい白いシャフトは芯がないので硬くソリッド感を出すために中空にする必要がある。そして、それで欠点を補う訳だ。反応を速くすれば、よりごまかせる。
先角のつけ方ではたぶん−2点〜−5点程の差が出ると思う。
タップは実は大変に大きな差が出る。下手すると大きく下がるし、うまくいくと今までの欠点を全てごまかせる。
これはキューの性能に直結する訳だが、私の範疇ではないのでお客の好み、語らないでおく。
おっと、この他に見落とすところがあった。
シャフトのカットの仕方。ここにも少し秘密がある。書きにくいネ。
そして最後のカットが終わった後のサンディング。ここにも誰にも言えない秘密がある。
仕上がって並べてみると一見何も違いは見えないけれど、シャフトの違いだけで100点満点がすぐに40点になってしまうのだ。
キューを作るのは簡単である。ただし、良いキューを作るのはちょっと難しい。
なぜならば木工品の良いキューには良いシャフトが絶対に必要だから。
優れたシャフトは素材選びから始まり、気の遠くなる時間をかけて作られる。薬液に浸けるなんて論外。
9HeartsはILCの自信作である。何と言っても競技用の道具である。

撞けばわかる!!by Lucky